オフィス・ラブ #3
「決まったんですか」
「決まってないけど、切りあげる」
なにその自信、と堤さんが笑う。
「まあ、いつまでも抜けてられたら痛手だろうから、マーケも必死に呼び戻すよね」
「向こうでも、できることはあるし、面白いけどな」
「一年いれば、お前なら十分だろ」
そうなの?
ほんとにそんな最短で、帰ってきてくれるの?
新庄さんが堤さんにうなずきながら、煙を吐く。
「それもあるし」
「離れてるのが、耐えられないって?」
語尾にかぶせるように、堤さんがいたずらっぽく言った。
新庄さんは、一瞬目を見開いた後、思案するように、目線を宙に浮かせると。
得心したように、堤さんに、にやりと笑いかけて。
ぎゅっと、私の手を握りなおした。
「限界だ」
堤さんが、弾けるように笑う。
私はあぜんとして、隣を見あげるけれど。
新庄さんは、たぶんわざと、そっぽを向いて、こっちを見てくれない。