オフィス・ラブ #3
「ほら、また、泣いちゃうよ」
「こんな奴に、わざわざ泣き顔なんか、見せるな」
「泣いてません」
目頭が熱くなるのを感じつつ、意味もなく強がってみる。
仕方ないなあ、と堤さんが、内ポケットから何かを取り出した。
「なかなか会えないふたりに、予約を入れてあげるよ」
新庄さんと私に、それぞれ渡されたのは、真っ白で上質な封筒。
堤さんは、灰皿にぽいと吸殻を捨てると、まだ内緒だよ、と言ってスペースを出ていった。
「なんだ?」
「さあ…」
ようやく手を放した新庄さんと、ふたりで首をひねる。
のりづけされていない封筒は、シールをはがせば簡単に開いた。
中にあったのは、焦げ茶色のシックなカード。
結婚式の招待状だった。
堤さんと。
彩の。