オフィス・ラブ #3
「えっ、僕もですか」
「せっかく縁ができたし、よかったら」
彩が二次会の詳細を渡すと、三ツ谷くんが素直に喜んで、お礼を言う。
「会費免除するから、恵利にひっついてろって、向こうが」
「納めますから、勘弁してください」
会えないふたりへの予約なんじゃなかったの、堤さん。
「どういうことだ」
「わ、私も、何がなんだか」
こっち、にらまないでよ。
新庄さんは、見たこともないくらい動揺し、そのあまり、機嫌が悪くなっていた。
本当に、何がなんだか、だ。
堤さんと彩の初対面の場には、私もいたはず。
あれからつきあいだして、もう結婚?
彩と堤さんが、結婚?
はっと気がついた。
この、日付。
彩が、家族の集まりに呼びたいから、空けといてと言っていた日じゃないだろうか。
そう伝えると、新庄さんが招待状の日付を眺めて、確か、と眉根を寄せる。
「都内のレセプションに出ろって、堤がアポ入れた日だ」
どちらも、絶妙に嘘じゃないのがすごい。
そして、互いに確認すると。
その予約が入ったのは、夏だった。
マジかよ…、と新庄さんが、愕然とした声を発する。
「堤さん、最初から彩を知ってたふうでした。何かご存知ですか」
新庄さんは、まだ呆然としたまま、しばらく考えて。
はっと気がついたように、俺だ、とつぶやいた。
「お前といるの、誰だって訊かれたことがあった」
「いつ頃ですか」
「年度末あたりだったと、思うけど…」
その声が、どこか上の空だ。
ここまで自分を取り戻せない新庄さん、初めて見る。