オフィス・ラブ #3
「言ったな、そんなこと」
新しい煙草をくわえながら、新庄さんがうなずく。
「あの時の人、いわゆる仲人体質でさ」
「仲人体質?」
「独り身の奴見つけると、すぐ誰か紹介したがるような」
「ああ」
わかった。
実際それで本当に結婚させちゃったりする、けっこう侮れない人だ。
「あの人も、社内で4組くらいまとめてるって聞いたから、これはまずいと思って」
「予防線を張ったわけですか」
そう、とうなずいて、新庄さんが煙草に火をつける。
私はもう、その場にへたりこみたくなった。
そういうことだったの。
そういう、ことだったのか。
「この歳で、まったく何も考えてなかったら、いくらなんでも無責任すぎるだろ…」
そんな男に見えたか、と少し傷ついたような顔で煙を吐く新庄さんに。
見えてなかったから驚いたんです、と苦しいフォローを入れた。
そもそも、あの時、私が衝撃を覚えたのは、新庄さんのその考え自体にではなく。
自分の露骨な願望に気がついたからで。
いや、違う。
私はやっぱり、新庄さんが「当分考えてない」ことにも、ショックを受けていたんだ。
もう、何やってるんだろう、私。