オフィス・ラブ #3
「あれ?」
データが、反映されない。
クライアントに提案する前に、まずは自分たちが使いこなすため、数週間、部内でシステムを共有することになっていた。
私も、ここ数日、マニュアルを片手にいろいろとダミーのデータを打ちこんでいたのだけれど。
「どうしたの?」
隣席の高木さんが、声をかけてくれる。
私と違って、こういうのが得意らしい高木さんは、ちょっと見せて、と椅子ごと移動してきた。
それに場所を譲って、横から画面をのぞきこむ。
「確かに変だね。俺んとこでは、問題なかったけどなあ」
サポートに電話してみよう、と言って電話をとりあげる。
出た相手と少し話してから、すぐに受話器を置いた。
「今、アドテクみんな出払ってるらしい。後で、人をよこしてくれるってさ」
「すみません、ありがとうございます」
不思議な動作だねえ? と言いながら、高木さんが外出の準備を始める。
お互い、イベント担当は、忙しい時期だ。
と、そうだ、と言って、鞄からクリーム色の封筒を取り出した。
「朝のミーティングの時、大塚さんいなかったから」
「なんですか?」
照れくさそうに笑う高木さんが渡してくれたのは。
結婚式の招待状だった。