オフィス・ラブ #3
彩は、最高に可愛くて、綺麗だった。
小柄な身体に、意外なマーメイドラインのドレス。
女性らしいボディラインを強調する、無駄のないそのデザインが、かえって彩をキュートに見せている。
秀逸なチョイスだった。
堤さんのセンスだろうか。
お父さんが早くに亡くなっていることを知っていた私は。
バージンロードに、おじいさんらしき人と一緒に彩が登場した時、もう泣いた。
「非経済的だ」
新庄さんがぼやく。
「晴れの前夜に、ネガな発言するなよ」
「誰も酔わないんなら、水でいいじゃないか」
4人で次々と空けるワインボトルは、すでに5本目に達し、あまり大きくない木製のテーブルを埋めていた。
驚かせたお詫び、と言って。
式と披露宴を行う、この由緒あるホテルでの前泊を、彼らは私と新庄さんにプレゼントしてくれた。
彩たちもここに数泊するので、披露宴の前夜である今、飲もうよ、とふたりのスイートルームに誘ってくれたのだ。
「俺は一応、酔ってはいるよ」
「しらふではないって感覚ですよね、わかります」
私の言葉に、わかるわかる、と彩が続く。
言動に影響が出るほど酔っぱらいはしないけれど、しらふでは確実にない。
そういう状態が、どこまで飲んでも延々と続くのだ。
「それなら、俺もわかる」
「どんな感じになります?」
やっぱり新庄さんも、少しは酔うんだ。
問いかけに、うーんと煙草をくわえて考えると。
「ちょっと、楽しくなるよな」
楽しくなる!
その似合わない響きに、本人を除く3人は大笑いし。
何を笑われたのかわからないらしい新庄さんは、ぽかんとしていた。