オフィス・ラブ #3
確かに私だけ、部内の他の人と、2世代OSが違う。



「最新OSに対応してないって、怠慢じゃない?」

「言うな。企業への普及率は低いから、後回しにせざるを得なかったんだ」



堤さんの鋭い突っこみに、新庄さんが面白くなさそうな声で答える。



「それより大塚、マニュアルにも、対応OSが書いてあるだろ」

「すみません…」



基本的すぎて、完全に見落としていた。

たぶん、高木さんも。

新庄さんの声は厳しくないけれど、わざわざ来させてしまった手間を思うと、本当に申し訳なくて、縮こまる。



「まさか、対応してないとは思わないもんねえ」



楽しそうに言う堤さんを、うるさい、と新庄さんが一喝した。



「私、来週まで、使えませんね…」



このシステム。

業務が遅れると思って、堤さんにそう言うと、いや、と新庄さんがデスクに腰をかけて足を組んだ。



「むしろ使って、不具合を報告してくれないか。時間のある時でいいから」

「ひとんちの子だと思って、便利に使わないでくれる」

「持ちつ持たれつだろ、頼む」



殊勝に言われて面白くないのか、堤さんがつまらなそうに承諾する。

6月に製品チームに新チーフが入ったおかげで、堤さんは、ようやく統括役に専念できるようになっていた。



「マーケのデバッグフォームがあるから。サーバの場所を後でメールする」

「はい」



どさくさで、仕事が増えてしまった。



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