オフィス・ラブ #3
「へえ、先月誕生日だったんだ、おめでとう」
冷たいパスタを巻きとりながらお礼を言うと、斜め前の席の堤さんが、愉快そうに私の耳を見た。
「で、それ、新庄が選んだの?」
「一応、一緒に選んだらしいですよ。決めたのは、ほぼ新庄さんらしいけど」
「ふうん」
私の前に座る彩が、なぜか答える。
なんでみんな、同じことを訊くんだろう。
そんなに違和感があるんだろうか。
私の隣にいる新庄さんも、話題を変えたいと思っているらしく、黙々とパスタを食べていた。
「なんでピアスにしたの」
「私が希望したんです。ちょうど、なくしたところだったので」
質問は新庄さんに向けられていたけれど、即座に、お前が答えろ、という一瞥を受けて、とっさに返事をした。
システムの件がひと段落したところで、堤さんが、ランチに行こう、と言い出し。
彩と約束のあった私は、そう断ったんだけれど、じゃあ彼女も一緒に、と言われ。
彩にメールをすると、別にいいよという答えが返ってきてしまい。
こういう事態になっている。
なに、この4人で食事って。
「次のイベントは、クリスマスか。何あげるの、新庄?」
今度は逃げられないようにか、はっきりと新庄さんに向かって問いかけた。
「何がほしい」
「ま、まだ、わかりません」
それをワンタッチパスのごとく振られて、慌てて答える。
それを見た堤さんが、ダメだなーお前、とフォークを振った。