オフィス・ラブ #3
身体を返されて、冷えた背中に歯を立てられる。
濡れてまとわりつく衣服を、苛だったようにはぎとって。
寝室まで行くことすら許さず、新庄さんは私を抱いた。
「最長は…?」
「まあ、3年ってとこだな」
車体の水気を丁寧にふきとりながら、新庄さんが言う。
行かないで、とは思うけれど、キャリアのためには、行ってほしい。
寂しい、なんてそんなこと、言わなくたって、わかってるだろう。
そう考えたら、言うことがなくなった。
「そんな顔、するな」
新庄さんが苦笑して、私の頭をかき回す。
私は、どんな顔をしてるんだろう。
最短、一年。
車を駐車場に戻して、部屋へ上がる間も、私はぼんやりしたままだった。
おい、と小突かれても、何も答えることができなくて。
リビングに突っ立つ私に、新庄さんが、タオルを放る。
それでも動かない私に焦れたのか、そのままごしごしと髪を拭いてくれた。
なんでそんなに、平然としてるの?
どうして何も言わないの?
見あげた瞳に、感情が出すぎたのか、私を見た新庄さんの目が、戸惑ったように揺れて。
なぜか、腹立たしげに顔をゆがめると。
唐突に、激しく噛みつくキスをして、その場に私を引き倒した。