オフィス・ラブ #3
「週末、会えますか?」
そう訊くと、当たり前だろ、と新庄さんが笑った。
薄く開けた窓に煙を吐いて、私を見る。
「土曜の昼前に出るから、前の夜から来たらいい」
「じゃあ、金曜は頑張って早く帰ります」
そう意気ごむと、新庄さんがコンソールボックスから何かを取り出して、私の手に握らせた。
鍵だった。
「たまに、見に行ってくれないか」
部屋と、車。
なんでもないようにそう言って、灰皿の上で煙草を叩く。
「俺もたまに帰るけど、相当、間が空くだろうから」
「はい」
任せてください、とできる限りの明るい声を出すと、頼む、と新庄さんが安心したように笑った。
いつか、もらえるのかなと思ってた、新庄さんの部屋の、合鍵。
こんなふうに、手に入ったって。
ほんのちょっとしか、嬉しくない。