オフィス・ラブ #3
外出から戻ったところを、エントランスで呼びとめられた。
「三ツ谷くん」
「今、時間あります?」
うなずくと、受付フロア横のカフェに連れていかれる。
4月の新人研修で私の部署に来た彼は、その後マーケに行き。
まさかの新庄さんのチームに入り、そこで2週間の研修を受けた後、勝てる気がしません、とだけ言ってきた。
6月に企画部に配属され、うちの部署とも関連のある仕事をしているので、たまに顔を合わせる。
営業に比べてカジュアルな服装が許されるため、ジャケットにチノパンという恰好の彼に、新人の匂いはすでにない。
パリパリと楽しそうに働いているのが、こちらにも伝わってきていた。
「新庄さんの話って、どのくらい聞いてます?」
ドリンクが来るのも待たずに、三ツ谷くんが切り出す。
「最短一年ってことくらいだけど…」
どのくらい、って、どういうことだろう。
何か、内情があるんだろうか。
一時的にだけれど、マーケに行っていた彼は、その後も内部情報をくれる相手を、そつなくつかまえたらしかった。
「6月の人事で、あそこのグループに次長が入ったのは、知ってますか」
「その人事、自体は、知ってるかな」
「その人と新庄さんが、うまくいってないんですよ」
もっと正確に言えば、次長が新庄さんを疎んでます。
そう聞いて、耳を疑う。
あの新庄さんが、上司に疎まれるなんてこと、あるだろうか。