オフィス・ラブ #3
何、それ。

こっちの台詞だよ。


どれだけ私に言ってないことがあるの。

私だって、言ってくれなきゃわからない。



「寂しいですよ」



この際、全部言ってやろうかという気になって、くわえ煙草でコーヒーを注ぐ横顔をにらむ。



「もっと会いたいし、離れるのは嫌です」



とげのある声に驚いたのか、新庄さんが私を見た。

少し目を見開いて、そうか、とカップをひとつ差し出してくれる。


受けとると、香ばしい湯気が優しく鼻を突いた。

胃に負担がかからないように、ミルクを入れたいなと思うけれど、冷蔵庫はもう電源を切ってある。

おいしいからいいやと、そのまま飲んだ。



(『そうか』って…)



本当に、言うまでわからなかったんだろうか。



「新庄さんは?」

「ん?」

「寂しいとか」



シンクに腰を預けて、新庄さんがカップに口をつける。

それを吹きながら、そうだなあ、とつぶやいて。



「正直、わからない」



首をかしげて、そう言うのに、コーヒーをぶっかけてやりたくなった。


どこかで聞いた台詞に、ショックというより、もはやあきれる。

車には、あんな切なそうに別れを告げておいて、私にはそれか。

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