オフィス・ラブ #3
額から、体温が伝わってくる。


この人は。


本当に、言わないとわからないんだ。

絶対知られたくない気持ちは、意地悪く、すぐ読みとるくせに。


肝心のことは、言ってあげないと、わからないんだ。



自分勝手で。

自信家で。

人を好きに翻弄する、最低男のくせに。



結局、この人も。

まだまだなんじゃないか。



「…言ったら、どうなるんですか」

「場合によるな」



額が離れて、急に現実的な答えが返ってくる。



「毎日、電話するかもしれませんよ」

「いいけど、仕事中は勘弁しろよ」

「電話口で、泣くかも」

「たまになら、許す」

「すぐ会いたいって言い出すかも」

「来ればいいだろ」



どうしようもない、リアリスト。

だけどそれだけに、この人の言葉は、信じられる。



「行けるようなら、俺が行ってやるよ」



3時間半後でよけりゃ。

優しい声が笑う。


新庄さんの腿の上で握られた手に、あとからあとから、涙が落ちる。

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