オフィス・ラブ #3

少し前の、お盆の頃。

私は27歳になった。



「お前も、長期休み中のクチだな」



そう言ったのは、3月末生まれの新庄さんで。

お互い、春休みと夏休みの真っ最中に誕生日が来るので、学校でおめでとうと言われたためしがない。

そう、うなずきあった。


何がほしいか訊かれたので、ちょうど気に入っていたのを片方なくしてしまった、ピアスと答える。

一緒に選びに行くならいい、となぜか偉そうな了承の言葉をもらった。



夏休みはお互いかぶらず、どこにも行かれなかった。

それまでどおり、土日のどちらか、新庄さんが休める日は、極力会うようにしていたけれど。

多忙な彼には、なるべく身体を休めてほしくもあり、私の仕事の都合もあり。


週末は、二週に一度会えれば、いいほうだった。





「これとか、好きなんですが」



ないな、とたいして見もせずに、一蹴される。

自分で選べと言うわりに、いちいち注文のうるさい新庄さんと、ようやく意見が合ったピアスは。

プラチナにダイヤの埋まった、軽く揺れるタイプの可愛らしいデザインで。


バレンタインがぐだぐだになったため、どうか等倍返しでとお願いした、ホワイトデーのチョコレートに続いて。

私が新庄さんからもらった、ふたつめのプレゼントとなった。



まだ、なんにも知らない、8月。



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