オフィス・ラブ #3
寂しかったら言え、と言われはしたものの。

そんなにすぐに、習慣は変えられるものじゃない。


寂しくないと言ったら嘘になるけれど、一週間会えないくらいのことは、これまでもざらだったし。

電話したところで、何を話せばいいのかわからなくなりそうだったしで。


新幹線に乗る彼を見送ってから、一度も連絡を取りあっていなかった。



声を聞きたいし、もちろん会いたい。

だけど、泣きつくのは、本当に耐えられなくなった時までとっておこう、という気持ちもあって。


まだ大丈夫。

そう思えるうちは、これまでどおり、必要な時にだけ連絡をとろうと決めていた。

いや、決めていたわけじゃないんだけど、結局そうなりそうな気がしていた。



「まあ、あんたたちがおはようメールとかしてたら、それはそれで気持ち悪い」



変な想像しないでよ、と文句を言うと、彩が笑った。





この時期は、忙しい。

今週末にもイベントがあるし、その翌々週もまたイベントだ。


このまま多忙さに助けられて、寂しがるヒマがないといい。

そう願った。



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