オフィス・ラブ #3

「なるほどね」



3人だけの会議室で、優雅に脚を組んだ堤さんがうなずく。

担当者レベルで、内密に話してくれたんです、と断ってから、すべてを話した。



「いくら本部長が変わったとはいえ、ちょっといきなりすぎませんか」



高木さんが息巻く。



「AOR制の廃止と、シェアの均等化は、事実上、うちの力を削ぐのが目的としか思えません」

「それは、思っても言わないように」



堤さんが冷静に諭す。



「まあ、僕も同感だけどね。けど、どうやら先方も内部で温度差があるようだし」



ふむ、と考えこむように言葉を切ると、こちらを見てにこりと笑った。



「そういう現場の声は、僕や課長の耳には届きづらい。また何か聞いたら」



必ず、上にあげて。


そう言って私たちの肩を叩くと、会議室を出ていった。





家に帰った時には、0時を過ぎていた。


部屋着に着替えて、洗面所でメイクを落として顔を洗う。

なんだか、どっと疲れた。


一連の動きは、クライアントの方針変更と言ってしまえば、それまでだけど。

いち営業員としても、やはりショックは大きい。

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