オフィス・ラブ #3
「はい、お誕生日おめでと」
遅ればせながら、と彩が手のひらサイズの包みをくれる。
私が5日間の夏休みをとった直後に、彩も同じだけとったので、しばらくぶりのランチだった。
開けてみると、リクエストどおりの、透き通ったエレガントな瓶の香水。
「ありがと! 毎日使う」
「新庄さんからは、何もらったの」
これ、と耳を見せる。
なるほどー、と彩がにやにやするのに、何よ、と言うと。
「それ、新庄さんのチョイス?」
「形ばかりは一緒に選んでたけど、決定権は向こうだった」
私が自分で選ぶものにしては、デザインが可愛らしすぎる。
彩もそれに気づいたんだろう、わけ知り顔で、笑ってみせた。
「あの人には、恵利がそういうイメージなんだねえ」
改めてそう言われると、顔が赤くなるのを感じる。
私も、同じことを思ったからだ。
「いいよ、それ。似合ってる」
彩はにっこりと笑って、大盛りで、と注文したつけ麺にとりかかった。
彼女は、最近幸せそうだ。
でもたぶん、相手は大森さんじゃないと、私は感じている。
何があったのかは知らないけれど、主査とはお別れしたんじゃないだろうか。
どんな形であれ、理由であれ、別れが痛くないわけがない。
苦くないわけが、ない。
今、彩が満たされてるなら、それでいい。
そのうち、何か話してくれるだろう。