オフィス・ラブ #3
「我々の強みは?」
全メディアに不偏的に強いこと。
クリエイティブやプロダクトの層が厚いこと。
口々に声が上がる。
イベントのために、ちょうどメディアチームが全員集まっている。
初日の終了後、作戦会議とでもいうべきものが、宿泊先のホテルで開かれていた。
クライアントは、もっと上クラスのホテルに泊まっているので、ここなら会う心配はない。
ロビーの一角でテーブルを囲み、堤さんが各員に話を振っていく。
「じゃあ逆に、弱みは、大塚さん?」
「強みに頼りすぎた、オーバースペック」
それしかないと思っていたので端的に答えると、周囲から、いたた、というリアクションがあった。
ひとり掛けのソファで脚を組んでいた堤さんが、クリティカル、と楽しそうに笑ってパチンと指を鳴らす。
「つまり僕たちは、望む以上のものを押しつけて、ゆえに価格も高く、小回りが利かない」
「ただし、提供するクオリティは、他店とは比較になりません」
林田さんが自信のこもった声で言うと、堤さんがうなずく。
「代理店の特性は、それ自体に良し悪しがあるわけじゃなく、相性だと僕は思う」
ブランドとの相性、広告主との相性。
なるほど、もっともだ。
「これまで見た限りでは、僕らのその相性は、悪くない」
別部署から来た、いわば一番客観的な視点を持つ堤さんにそう言われたことで。
みんなが少し、ほっと胸をなでおろしたようだった。
「我々の基本方針は、変えない」
堤さんが、きっぱりと言う。