オフィス・ラブ #3
6月に、橋本さんというチーフ階級の男性が異動してきた時、堤さんのほうが彼より若かったので、統括役は橋本さんになるんじゃないかと誰もが思っていた。

けれど課長が決定した配置は、現状のとおり。



(課長の勘は、すごいなあ)



イベントの明けた月曜、二泊ぶんの荷物を持って、会社終わりに直接大阪に向かいながら考える。

堤さんの統括は、予想をはるかに超えて、ふたつのチームを密接にまとめている。


新庄さんと春日部さんが基礎を築いた、統括を頭とするピラミッドの構造。

確かにこの形は、今の私たちに最適かもしれない。







知らない土地の乗り換えは、どうしてこう複雑に感じるんだろう。

新幹線の駅から連絡した時は、私のほうが早く着きそうだったのに。

これじゃ、結局同じくらいになりそうだ。


マンションのある駅で降りて、地下道を、教えられた出口へ足早に向かう。

と、いきなり後ろから肩をつかまれた。


びっくりして振り向くと。



長身に、ダークグレーのスーツの。

変わらない、私の大好きな姿が、そこにあった。



新庄さん、と言う前に、勢いよく、ぎゅっと片腕で抱き寄せられる。

一瞬で離され、優しい微笑みが、私を見おろした。



ダメだ。

もう、泣きそうだ。


私は、自分で思っていたよりもずっと、この人に会いたかったらしい。

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