オフィス・ラブ #3
本当?

私は、新庄さんにとって、そんな存在になってる?

もらうばかりじゃなくて、何か、あげられてる?



新庄さんは、歯みがかないと、と変に真面目な一面を見せて、洗面所へ立った。

私もついでに流しを使わせてもらおうと、洗顔セットを持って追いかける。


やっと、という感じで歯をみがき終えた新庄さんは、まだみがき途中の私の頬にキスを落とすと、寝室へ消え。

次に見た時には、ぐっすり寝ていた。





ベッドの、壁側を空けておいてくれている。

そのことに、笑みが漏れた。


横を向いて、下の手を枕の下に敷くように入れる、いつもの寝姿。

もう片方の腕に、顔をうずめるようにして眠る、見慣れた姿が、どうにも愛しくて。


眠りを妨げないように、こめかみのあたりにそっとキスをすると、電気を消して隣にもぐりこんだ。



確かに狭いベッドの上で、身体がぶつかると、かろうじて意識が残っているのか、ゆるく抱きしめてくれる。

うかつに身体を離すと、新庄さんが落ちてしまいそうなので。

私も、彼の身体に腕をからめて眠ることにした。



慣れないベッドは、違和感があって。

だけど、新庄さんの気配と匂い以上に、私を安心させるものは、やっぱりなくて。



新庄さんの穏やかな寝息に誘いこまれるように。

私も眠りに落ちた。



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