オフィス・ラブ #3
「来月、どのていどいけそう?」
「2誌は、候補がありますね…」
林田さんに、提案のメドを訊かれて、そう答える。
2誌しかないのか、と言いながら思った。
手帳を開くと、憂鬱になる。
アポが、増えない。
新規案件がないせいだ。
思わず、ふうとため息をつくと、林田さんも苦く笑った。
「モチベーション保つの、つらい時期だけど。上げてこうね」
暗くなった自分を恥じて、はい、とあせって返事をする。
何やってんだ、私。
ここで頑張らなきゃ、先がないんだよ。
部のみんなに、迷惑をかけるんだよ。
だけどどうしても、全開の気力が出てこなくて、気分を変えようと、外出することにした。
出てから雑誌社に連絡を入れて、営業さんと会って、企画の話でもしよう。
そう思ってバッグを持ち、よし、と気合を入れ直して、フロアのドアを開ける。
うわ、と声がして、向こう側でも誰かがノブを握っていたらしいことに気づいた。
慌てて謝ると、面白がるような声がする。
「すごい勢いだね」
堤さんだった。
そのままドアを開けて待っていてくれるのに、お礼を言いつつフロアを出る。
すれ違いざま、顔をじっと見るので、なんですか、と目で問うと。
綺麗な顔が、ふふっと笑う。
「カラ元気も、元気のうちってね」
いいんじゃない、と持っていたファイルで私の背中を軽く叩いて、フロアへ入っていった。
見透かされてるなあ。