オフィス・ラブ #3
カラ元気も、元気のうちか。


じゃあせめて、やる気のあるふりだけでもしてよう。

今は、はっきり言って、モチベと呼べるものは空っぽだけど。

そのうち、何かで満たされてくるかもしれない。


そう考えると、それだけで少し、気力が戻ってきた気がした。



(電話、してみようかな)



そんな気さえわいてくる。

車のことも、ちゃんと聞いてみよう。

きっと何か、彼なりの理由があるに違いない。






家に帰ったのは、0時前で。

新庄さんが帰っているかはわからないけれど、少なくとも寝てはいないはずだ。

ちょうどいい時刻だと思って、電話をすることにした。


少し長めのコール。

仕事中だっただろうか、と思い、切ろうとしたところに、ブツッと通じた音がする。


声を発しかけて。

聞こえてきた、知らない声に、一瞬頭が真っ白になった。



『もしもし?』



女の人。

あれっ、間違えたかな、と思い、携帯の画面を見る。

ちゃんと新庄さんにかけている。



「あの…」

『もしかして、ピアスの子?』



ピアス?

頭が働かなくて、どうにも言葉が出てこない。



『ベッドに落ちてたよ』



笑いを含んだ声が言う。

後ろには、アップテンポの音楽と、にぎやかな人の声。

クラブか、カジュアルなバーだろうか。

地下なのか、通話状況が、少し悪い。

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