オフィス・ラブ #3
新庄ォ!
そう叫びかけた彩を、三ツ谷くんと私が慌ててとめた。
「食堂ですから、石本さん」
「あんた、マーケなら、なんとかしなさいよ!」
「僕は、企画部です」
さっき自分で内線くれたでしょ、と三ツ谷くんが冷静になだめる。
彩の威勢がありがたい。
こんなふうに、喝を入れてほしくて、甘えさせてほしくて、ランチに呼び出したのだ。
お互い忙しくて、外に出る時間がなく、食堂になりはしたけれど。
大阪でのことや、ゆうべのことを途中まで話したところで、彩が、新人のなんとかを呼ぶ、と言いだした。
「内情、少しでも知ってる人に聞きたい」
そう言って、食堂内の内線で、三ツ谷くんを呼びつけて。
彼は、まったく見知らぬ彩から突然呼び出されたにもかかわらず、すっとんで来てくれた。
「確かにあっちの会社は、うちに比べたら女性率高いですよ。派遣社員が多いので」
「でも、同期って…」
「出向か、転籍じゃないでしょうか。いても不思議じゃないです」
そうなんだ…。
「女がどうこうってよりさあ」
「え?」
彩の声に、定食のトレイから顔を上げる。
「他人に勝手に携帯とられるとかさ。なに油断してんのって、思うよね」
あっ。
私が引っかかっていたのも、まさしくそこかもしれない。