オフィス・ラブ #3
上期中に交わした契約のおかげで、まだ貯金があって。
11月は、イベントやら雑誌のロケやらと飛び回って、幸いなことに忙しくできた。
合間に、望みの薄い提案と、コンペの準備をする。
心は空っぽでもいいから、とにかく手を動かそうと、一度決めてしまえば。
不思議と、身体は驚くほど動いてくれるもので。
表面上は、バリバリ、と表現できるくらいには、私は動いていた。
でも、もう限界かもしれない。
今年最後の月に入った時、そう感じた。
新庄さんから、連絡はない。
この間のことが、微妙にトラウマになっているのか、自分から連絡するのも、ためらう。
まったく音信不通となったまま、丸一か月が過ぎて。
そのことに気がついた時、自分でも愕然とした。
そんなことって、あるの。
離れてると、関係が途絶えるのなんて、こんなに易しいものなの。
物理的な距離って。
そんなに大事だったの。
送ってく、と。
何かにつけて言ってもらっていた頃が、今ではもう、夢のようで。
「何時に終わる?」という、もう当たり前のように受けとっていたメールの。
最後の一通が、受信箱から押し出されて消えたことに気がついた時、どうしようもなく悲しくなって。
もう、空っぽのまま動くのも、本当に限界だ、と感じた。