オフィス・ラブ #3
ベッドの上に置いていたバッグを探って、携帯を開くと、バックライトで、一瞬目がくらむ。

目をすがめて見た液晶には、かつて見慣れた文字が表示されていた。





『着信:新庄貴志』





突然、周囲が明るくなった。



ぎょっとして振り向くと。

寝室の入り口に、新庄さんが立っていた。


携帯を耳にあてたまま、壁のスイッチに手を置いて、たぶん私と同じくらい、驚いている。

そりゃ、そうだろう。



新庄さんが、携帯をゆっくりと耳から離して。

パチンとたたんだ。


遅れて、私の手の中の振動も、消える。



私は、ぽかんと突っ立ったままで。

そうだ、挨拶しなきゃ、と、バカみたいなことを考えた。


何かふさわしいことを、と思って。



お帰りなさい。



そう言うと。


なぜだか新庄さんは、目を見開いて。

一瞬、視線を外すと、ちょっと困ったように笑って。

それから、優しく微笑んで、私を見た。



「ただいま」



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