イジワルな君と私との恋愛事情

結side

私は、雪間くんが『大嫌い』だった。

パシリにされているからとか、イジメられているからとか、確かにそういう理由もあるが、一番の理由は違う。

その出来事はもう少し前にさかのぼる。

まだ私が雪間くんにイジメられず、ただ、クラスメイトだった時だった。

確かに雪間くんとは、言い合いとかのケンカをしたりはしていたけど、その時までは、フツーのクラスメイトとして、接していたつもりだ。

今ほど『大嫌い』ではなかった。

私が先生に頼まれて、資料を取りに、人気のない廊下を小走りに歩いていた時だった。

「ふざけるな!!」

突然、怒声がこだました。

(え!?なっ、何!?)

私は、びっくりして、立ち止まる。

でも、その怒った声の主を私は知っていた。

(えっ!?高ちゃん……!?高ちゃんがあんなに声を荒げて怒るなんて、珍しい……。一体、誰に怒ってるんだろう?)

そして、開いた扉から、そっと中を覗いた。

すると、その中にいたのは、雪間くんと高ちゃんだった。

(雪間くんと高ちゃん……!?二人がなぜ、こんな所に……。高ちゃんは、なぜ、怒ってるの?)

二人のことが……、いや、高ちゃんのことが気になって、私は不謹慎ながらも、覗き見していた。

「お前の同級生の女の子が、『雪間くんにフラれた』って言ってたぞ!」

そう言って、高ちゃんは雪間くんを睨みつける。

高ちゃんは、下級生のみならず、同級生、上級生の女の子たちから、よく相談事とかを受けているようだった。

その中には、高ちゃんのことが『好き』な女の子もいて……。

私はそう思うと、チクリッと胸が傷んだ。

私がそう思ってる間にも、雪間くんと高ちゃんの会話は続いていく。

「別に、俺が誰を振ろうが、あんたには関係ないだろ?」

雪間くんは、しつらつに冷たく、言い放つ。

前から思ってたんだけど、雪間くんって、高ちゃんのことが『嫌い』なのかな?

そう思ったが、さすがに、高ちゃんに『あんたには関係ないだろ』はないと思う。

それに、私は高ちゃんに向かって、雪間くんが、『あんた』呼ばわりしたことに対して、カチンッときていた。

(普通、『春名先輩』か、もう少しくだけても、『春名さん』でしょう?『あんた』って……。何様のつもりよ?)

高ちゃんは、雪間くんより一つ年上の先輩で、しかも、私の『大好きな人』なのに……。

『春名高行』こと、『高ちゃん』。

私の幼なじみ。

小さい頃から、ずっと一緒にいて、私は高ちゃんが大好きだった。

それが、いつの間にか、『恋心』に変わっていった。

でも、私はその『想い』を、高ちゃんに言えずにいた。

だって、今の『関係』が壊れてしまうのが嫌だったからだ。


「その女の子にお前、『不細工だから、付き合えない』って言ったそうじゃないか?その子、泣いてたぞ。」

高ちゃんは、『信じられない』と言った風な口調で、そう言った。

そしたら、雪間くんは、もっと信じられないことを言った。

「『不細工』だったから、『不細工』って言ったんだよ。それの何が悪いんだよ?」

と、雪間くんは、『自分は何も悪くない』といった感じで言った。

私は心の中で、

(うわ~、何この人。超最低……。)

そう思っていた。

そして、この日を境に、私は雪間くんのことが『大嫌い』になったのだ。

高ちゃんへの尊大な態度と、雪間くんへ告白した女の子を傷つけた言葉を平気で言えることに。

そのことが、どうしても許せなかったのだ。

その日から一週間だけ、私は雪間くんを無視し続けた。















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