浮気者上司!?に溺愛されてます
さっきの私と同じように、息をひそめて覗き窓から通路を窺う。
そんな恭介の姿に、私は凍り付いたように目を向けるだけだ。


物音は聞こえない。
きっと、恭介の目にも、不審な物は何も見えていないはずだ。


そう自分に言い聞かせても、後を尾けられた恐怖はまざまざと蘇って来てしまう。
この三日間は、恭介がずっと私のそばにいてくれたから、怖い思いもしなかっただけ……。


必死に恐怖を押し殺そうとする私の前で、恭介は焦れたようにドアのレバーに手をかけた。


「恭介っ……!」


そんな行動を咎めるように、私は声を張り上げた。
恭介は一度私を振り返ってから、ゆっくりドアを開いた。


フッと冷たい外気が室内に吹き込んでくる。
思わず身を震わせる私の前で、恭介は一歩外に踏み出して大きく辺りを見渡した。
そして黙ったまま肩を竦めて、しっかりとドアを閉めて鍵をかける。


そのまま大股で室内に戻って来て、一度肩で息をしてから、通りに面した窓のカーテンを大きく開いた。
その横顔が、わずかにハッと鋭くなったのがわかる。
私はなんとか立ち上がって、ガクガクと身体を震わせながら、恭介の隣からほんの少し顔を覗かせた。
そして。


「っ……」


息をのんで、隠れるようにしゃがみ込む。
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