浮気者上司!?に溺愛されてます
私の反応に、恭介はもう一度通りに目を遣ってから、ゆっくりカーテンを閉めた。


「……アレか?」


頭上から降ってくる短い問いかけに、ただ、ぶんぶんと首を縦に振った。


なんで。
昨夜もその前も、あの姿を見かけなかったのに。
だから、もう大丈夫だと思っていたのに。


恭介と一緒に確認したのは、確かにあの夜私が怯えたストーカーの姿だった。
三日前と同じ、ダッポリしたコートに、目深に被ったフード。
性別もよくわからないその人影が、通りを走っていく姿を、私は確かに目撃してしまった。


「……部屋の前で、何してたんだろ」


険しい表情のままそう言って首を傾げる恭介の声が、私の意識を上滑りしていく。


きっと……今まではずっとそこに恭介がいたから、何もして来なかったんだ。
それなら、明日から恭介がいなくなったら、いったいどんな手段を使ってくるんだろう?


しゃがんで俯いたまま、カタカタと震える私の横を通って、恭介は再び玄関に向かう。
きっと、ストーカーが何か痕跡を残していないか、確認しようとしてくれているんだろう。
だけど。


「やだ、止めて、恭介っ」


私は両手で頭を抱えて、恭介を止めた。
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