浮気者上司!?に溺愛されてます
広い総合エントランスの片隅。
スーツ姿のサラリーマンが所々で群がって立ち話してたり、ソファでちょっとした打ち合わせをする姿も見受けられる。
だからそれほど目立つ光景ではなかったはずだけど……。


「恭介……?」


ほんの少し視線を憚るように、人混みから顔を背ける恭介が佇んでいた。
そして、彼が身体の正面を向けるのは、私には全く見覚えのない、サラッとしたショートヘアが印象的なモデル張りの美人だった。


二人が一緒にいる姿を見ただけで、ドクンと鼓動が騒ぎ出した。
それは二人が漂わせた雰囲気のせいだけじゃなく、恭介の表情が、私が見たこともないくらい憂いを帯びていたせいだ。


一体何を話してるんだろう。
どう見ても仕事絡みの知り合いじゃないはず。


騒ぎ出した鼓動が一気に加速するのを感じた。


なんでこんなに緊張してるの。
自分にそんな疑問を投げかけた時、その答えを示すように、二人が歩き出した。
彼女は当然のように恭介の腕を取っていた。
その腕をまるで抱きしめるようにして歩いているのに、恭介はされるままになっている。


向かう先は、地上出口。
薄暮が訪れる都会のオフィス街に、二人は繰り出して行く。


「あ……」


見開いた目で、二人が見えなくなるまで見送って、私は自分がカタカタと震えていることにようやく気づいた。
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