浮気者上司!?に溺愛されてます
奥さんだ。


まるでパッと閃くように頭に浮かび上がった答えに、胸のドキドキが止まらない。


どうして恭介がオフィスビルで奥さんと会っているのか。
もちろん、この近隣で働いてるのかもしれないし、別に奥さんと外で会ってても不思議はない。
私が知らないだけで、これまでもあったことかもしれない。


だけど、どうしようもなく胸騒ぎがした。


どうして、今、このタイミングで?
その理由は、考えるまでもなく明らかだ。
だって……昨夜恭介は家に帰らなかった。
朝まで私のそばにいて、そのまま一緒に出勤した。


奥さんに疑われてしまった?
恭介の浮気がバレてしまった?


そう思ったら、背筋に嫌な汗が一筋伝った。


昨夜までなら、たとえどう疑われても、『誤解です』と言い切れたはずだと思う。
恭介にとってはしょせん浮気でしかないんだし、私が流されずにいられた昨夜までなら。
なのに今の私は、奥さんの目を正面から見つめ返せないだろう。


恭介を好きになるというのは、こういうことだ。
純粋に、『好き』だけじゃ済まされない。
簡単に恋人同士になれるわけじゃない。


私は恭介の奥さんから恭介と幸せを奪うことになるんだ。
間違いなく、人一人を不幸に追いやる。
それをリアルに実感して、頭の中が真っ白になりそうだった。


ダメだ。無理だ。そんな覚悟、持てるはずがない。
この想いを、実らせるわけにはいかない。
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