浮気者上司!?に溺愛されてます
食器がぶつかる音と、オフィスよりくだけた会話をする声。
ランチ時ピークのカフェテリア。
このオフィスビル共有の食堂で、うち以外にも数社の社員がひしめき合っている。
私の後ろに、数人のおじさんたちと入れ替わりで陣取ったのは、隣の部署の航空開発部の女性たちだ。
椅子を引いて腰を下ろした途端、ねえ、見た?と急いたように会話を始めるのが聞こえてくる。
「宇宙開発部の桜庭さんっ! 今日、指輪外してたよねっ!」
場を憚っているようで全然憚らないヒソヒソ声は、それほど意識して耳を傾けなくても筒抜けだ。
私はピクッと手を止める。
私の向かい側に座っているももちゃんにも、後ろの噂話は聞こえてるみたいだ。
「……課長の噂、だいぶ広まってるねえ」
ももちゃんが苦笑しながら少し身を屈める。
うん、と肩を竦めてから、私は気づかれないように背後の航空開発部さんを気にした。
「え~? たまたま外してるだけじゃない? それだけで期待するのも盛り上がり損っていうか」
「でもさ、結婚指輪って、そんな一々付け替えたりしないよね」
「それに、少なくとも今まで外してるの見たことないよ」
お隣の部署なのに、よく見てるなあ、と、感心してしまう。
それでも、会話の内容はかなり私の気を引くもので、聞き耳どころか振り返ってしまいたい衝動に駆られたけど。
「……さっきね、トイレで羽村さんまで総務部の主任さんと噂してるの聞いた」
そんなことをボソッとももちゃんが呟いたから、私は身体の正面を元に戻した。
ランチ時ピークのカフェテリア。
このオフィスビル共有の食堂で、うち以外にも数社の社員がひしめき合っている。
私の後ろに、数人のおじさんたちと入れ替わりで陣取ったのは、隣の部署の航空開発部の女性たちだ。
椅子を引いて腰を下ろした途端、ねえ、見た?と急いたように会話を始めるのが聞こえてくる。
「宇宙開発部の桜庭さんっ! 今日、指輪外してたよねっ!」
場を憚っているようで全然憚らないヒソヒソ声は、それほど意識して耳を傾けなくても筒抜けだ。
私はピクッと手を止める。
私の向かい側に座っているももちゃんにも、後ろの噂話は聞こえてるみたいだ。
「……課長の噂、だいぶ広まってるねえ」
ももちゃんが苦笑しながら少し身を屈める。
うん、と肩を竦めてから、私は気づかれないように背後の航空開発部さんを気にした。
「え~? たまたま外してるだけじゃない? それだけで期待するのも盛り上がり損っていうか」
「でもさ、結婚指輪って、そんな一々付け替えたりしないよね」
「それに、少なくとも今まで外してるの見たことないよ」
お隣の部署なのに、よく見てるなあ、と、感心してしまう。
それでも、会話の内容はかなり私の気を引くもので、聞き耳どころか振り返ってしまいたい衝動に駆られたけど。
「……さっきね、トイレで羽村さんまで総務部の主任さんと噂してるの聞いた」
そんなことをボソッとももちゃんが呟いたから、私は身体の正面を元に戻した。