浮気者上司!?に溺愛されてます
いやいや、それは全部恭介が異動してくる前のこと。
まだ二十代の頃のことなんだから、恭介くらいイケメンで出来る男なら、そのくらいの女性の噂もむしろステータスってものか。


そうは思っても割とグサッと傷ついてる自分がいて、いやいや傷ついてる場合じゃない、と言い聞かせる。


「ま、まあ過去の彼女はともかく……。ね、ももちゃん。既婚男性が突然指輪を外しました、って……」


今朝、それを発見したのは、多分私が一番乗りだと思う。
そしてこれだけ噂が広まってしまう前に、私だってその理由をずっとずっと考え続けた。


まさか、と思っても、別の誰かにもちゃんと否定してもらいたい。


「離婚とまでは飛躍しすぎじゃない?」


サラッと言われて、私はただホッとした。


だって、昨日奥さんと一緒にいるところを見るまで、恭介は確かにいつも通り指輪をしていた。
それが、奥さんと会った後、今朝……となると、心穏やかではいられない。


奥さんと何を話したのか。
無断外泊が原因でそのまま離婚危機に突入したのなら、責任の一端は私にある。
もちろん、私が奥さんと相対して話をする事態にでもなってしまうなら、それはちゃんと説明出来る。


離婚に発展させるようなやましいことはしていない。
いや……あんなにドキドキして、恭介のこと好きだと気づいてしまった今、胸を張って、と言えないところが苦しいけど。


「でも、もし桜庭課長が本当に離婚危機に直面してるとなったら、原因はなんだろうね。結婚した後は、女性関係の方も全く聞かなかったのに」


ももちゃんがぼんやりと呟く疑問に、私は曖昧に頷いた。
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