浮気者上司!?に溺愛されてます
大きく口を開けて、酸素を吸い込むと、喉の奥のほうでひゅっと変な音を立てた。


それでも、ゴクッと唾を飲み込んでから、私はモニター画面に目を凝らした。


写真だった。
昨日の朝、私と恭介が私の部屋から一緒に出てきた瞬間を捉えた複数の写真。


パッと見ただけでも、『お泊まりした後の朝』って感じの光景だ。
どこから撮ったのか、割と鮮明で、誰が見ても私と恭介だって断言出来る代物だった。


こんなものを誰かに見られたら誤解される。
どう言い繕っても、信じてもらえるとは到底思えない。


ドクンドクンと身体中至る所で血管の脈動を感じた。


『秘書室・藤川紫乃』……。
この人は恭介の奥さんなんだろうか。
ショートしそうな思考回路を必死に働かせて、私はギュッと目を閉じた。


ああ、そうか……。
もしかしたらあのストーカーも、恭介の浮気を疑った奥さんの仕業だったのかもしれない。


奥さんは知ってる。
恭介の浮気も、無断外泊の時私の家にいたことも。
知っていて、私に『手を退け』と忠告している。


それなら、奥さんは恭介と別れるつもりはないんだろう。
恭介の浮気を水に流して許してくれるのなら、二人の未来に邪魔なのは私という存在だけだ。


たとえ恭介が結婚指輪を外してしまっても、倫理的にも道徳的にも、正しい未来を壊しちゃいけない。


私は、震える手でマウスを握った。
そして、恭介のメールを完全に削除した。
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