浮気者上司!?に溺愛されてます
咄嗟に身を捩って逃げ出そうとしたのに、恭介の腕に阻まれて身体を動かすことも出来ない。


「無駄だよ、奏美。俺、本気出すって言ったろ」


意地悪くわずかに上げた口角を歪ませて、恭介が私の耳元でそんな挑発的な言葉をかます。
恭介との身体の間隔を少しでも保とうと、私は両手を恭介の胸に置いたまま、自分の胸が大きく跳ね上がるのを感じた。


「だ、ダメっ」


咄嗟にそう声を上げて、限界ギリギリまで顔を背けた。


「本気は、ダメっ!」


必死に放った言葉に、はあ?と間延びした声が返された。


「何それ。意味わかんねー」

「恭介は、私に本気になっちゃダメ!」

「……じゃ、何? 浮気とか遊びならいいって言いたいのか」


恭介が私に繰り出した質問に、一瞬身体がビクッと震えた。


「……嫌だ。そんなの、いいわけないじゃない」


自分でも支離滅裂だ、と思う。


恭介が本気になったら困る。
だけど、浮気は受け止めたくないし、遊びなんて私には無理だ。
案の定、恭介も、はあ?とさっき以上に焦れたような声を上げた。


「じゃあ、俺はどうしろって言うんだ」

「だ、だから、私なんかに構ってないで、もっと……」

「……あ~。なんかマジ、イライラして来た。もういい。奏美、黙ってろ」

「え……」


私の言葉を、ガシガシと頭を掻きながら簡単に遮って、恭介はフッと私に上目の瞳を向けた。
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