浮気者上司!?に溺愛されてます
肌にかかる吐息に慌てた瞬間、


「……っ!」


恭介の左手が、私の胸に触れたのがわかった。


カアッと、頬に血が上る。
恭介は私の首筋に唇を這わせて、徐々に、反応を試すように、左手を動かし始めた。


「やっ……! きょ、恭介っ!!」


真っ白になりそうだった頭の中で、危険信号が明滅した。
私は精一杯の抵抗を試みて、恭介の左手に手をかける。
そして、その身体を自分から剥がそうと必死に身体を捩った。


その時。
コトン、と、ドアから小さな音が響いて、私も恭介も一瞬身体を震わせた。
そして一度顔を見合わせてから、ゆっくりドアの方に視線を向ける。


恭介は私から離れると、一歩足を踏み出してドアに近づいた。
恭介、と思わず声をかけると、恭介は人差し指を立てて唇に当てて、シッと短く私を制した。


覗き窓から外の通路を確認してから、恭介はドアのポストをゆっくり開けた。
そしてそこから、定形外の茶封筒を摘み上げる。


「……なんだ? これ」


恭介の手にあるその封筒に、何故だか胸騒ぎがして、ドクンと、鼓動がリズムが狂わせた。
裏返して差出人を確認する仕草を見せても、恭介にだってきっとわかってる。
これは今の今直接ポストに入れられた物。
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