浮気者上司!?に溺愛されてます
私の横目に映る位置で、恭介が、投げ出した長い足の膝の間で両手の指を絡ませるのを見やりながら、私は目を伏せて小さく首を横に振った。


「昨日の日中、社内メールにも……」

「メール? ……ああ、アイツまだメルアカ使えるんだ」


一度首を傾げてから、恭介は納得したように頷いた。


「……ごめんな、奏美。驚かせたろ」


肩を落としてポツリと謝る恭介に、私は黙って首を横に振った。


「……紫乃は……。俺のせいで、一年前から療養休暇取ってるんだけど」

「恭介のせい……?」


一年前なら、恭介が史上最年少昇進を果たしてうちの部に異動してきた頃のことだ。
そのタイミングで、紫乃さんが療養しなきゃいけないなんて、恭介はいったい何をしたんだろう。


「多少の負い目があったから、紫乃の依存にもちょっと行き過ぎの行動も甘く見てた俺が悪かったって思ってる。……そうだよな。優しく甘やかすだけじゃ、紫乃の為にはならないんだから」


どこか遠い目をして紡ぐ言葉に聞き返したい気持ちになるけど、立ち入り過ぎのような気がして、私はなんとか思い留まった。
黙って俯く私を、恭介がわずかに見下ろしているのが気配で感じる。


「だから……決着つける。今度こそ」


短い言葉に込められた信念のようなものを感じて、私はハッとして顔を上げた。
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