浮気者上司!?に溺愛されてます
言いたい言葉は、音になってくれない。
声も出せず、ただ涙がこみ上げて来た。
そんな私をジッと見つめて、恭介が左手で私の頬をそっと撫でる。


「奏美。そろそろお前も素直になれよ」


不敵に挑むような言い方をして、恭介はフッと目を細めて私を見つめた。


「昨夜も今も奏美は本気で嫌がらない。……最初の態度とはエラい違いだ」

「そ、そんなことない。私っ……」


頷いちゃいけない。
恭介の誘導尋問みたいな手に乗せられちゃいけない。


必死に首を横に振る私に、素直じゃないなあ、と呆れたように、恭介が深い溜め息を繰り出した。


「そんなことなくないよな。奏美。……俺に負けないくらい、お前だって俺が好きだろう……?」

「っ……」


そんな言葉を妖しく耳元で囁かれたら、嫌でも心臓が騒ぎ出してしまう。
即座に否定しなきゃいけないのに、身体から力が抜けていく。


奏美、と、恭介が優しく私の名前を呼ぶ。
その手が私の頬を撫でる。


ああ、もう限界だ。
こんな優しさに温もりに、向けられる想いに、これ以上どう抗えと言うんだろう。


「きょ、きょう、すけえ……」


名前を呼んだ声は、もう震えを隠しきれなかった。
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