浮気者上司!?に溺愛されてます
シャワーを浴びながら、全身が心臓になったかのようにドキドキバクバク拍動するのを抑えられなかった。
気を抜くとペッタリとその場にへたり込んでしまいそうなくらい、緊張してるのがわかる。


あああ……。どうしよう……。


シャワーのお湯を止めようと、コックを捻る手も震えて力が入らない。
猛烈な勢いで打ち鳴っている心臓は、口から飛び出てきそうだ。


今朝。ほんの十時間ほど前に、私は恭介と、この恋に堕ちる覚悟を決めた。


誰に報告しても祝福してもらえない。
もしかしたら一生人の目を忍ぶ恋になるかもしれない。


非難される。糾弾される。
だから恭介がちゃんと紫乃さんとの関係を清算するまで……ううん、ほとぼりが冷めるまでは、関係を進展させるべきではない。
そう思っていたのに……。


なんで私、こんないいように流されてるんだろう!?
恭介があまりにサラッと誘うから、なんの疑問も持てなくなって肩を抱かれるままに、一緒にホテルに来てしまったけど。


先にシャワーを浴びた恭介は、あまりに妖艶なしどけないバスローブ姿を惜しみなく披露してくれた。
それだけでいっぱいいっぱいになって、これからここで起きることを妙にリアルに想像して、シャワールームに逃げ込んでしまった。


出て行ったら、それが最後だ。
そもそも、どんな格好で出て行けばいいんだろう。


まるで、舌なめずりするオオカミの前に無防備な姿を晒す赤ずきんのような気分だった。
< 147 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop