浮気者上司!?に溺愛されてます
もう私、十分悪い女に足突っ込んでるじゃない。
人一人を不幸にする。
そうわかっていて、恋心を抑えられなかった。


中途半端にいい子になったりするから、いつまでも躊躇いばかりが先に立って、勢いに任せられない。
恭介だけじゃなく、自分の心までも焦らす結果になる。


恭介が好き。
そう告げた時、私はこの先起こる全ての苦しみを覚悟した。
私にそう言わせた恭介も、私以上に苦しい覚悟を抱いているはずだ。


「もう私と恭介は、運命共同体なの」


そんな言葉で自分を鼓舞した。
そう、自分から進んで堕ちてしまった以上、何を捨てても手に入れたかった物を大切にしないと。


急いで下着とバスローブを身につけると、思い切って一歩部屋に踏み出した。
小さなソファに身を沈めていた恭介が、フッと目を上げて私をジッと見つめる。


視線がまとわりつくように感じる。
ドキドキする胸を押さえるように胸元の袷をギュッと握りしめて、私は恭介の前で足を止めた。


「長いな、風呂。のぼせてるんじゃないかって、後一分経ったら覗きに行こうかと思ってた」


くすっと笑う恭介の意地悪な言葉にも、いっぱいいっぱいで言い返せない。
逸る心と増幅する緊張を抑え込むように、私は自分から恭介に抱きつくと、その唇に拙いキスをした。


「っ……。何? 積極的だな。怖がってるんじゃなかったのか?」


言われたままに怖がってわずかに震える私を、恭介は余裕の笑みを浮かべて意地悪に探る。
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