浮気者上司!?に溺愛されてます
悔し紛れに思いっきり顔を背けて、すみませんね!と叫ぶ。


「ど、どうせ私はアンモナイトですよっ!!」

「いや、アンモナイトでもシーラカンスでも別にいいんだけどね」


漫才の突っ込みのような間合いでシレッとそう言って、桜庭課長が私をまじまじと見つめている。
その視線がとても居心地悪い。


いろいろと失礼で最低な男だと思った。
だけど週明けのオフィスでは間違いなく私の上司だし、その上、この人の真っすぐな視線はいいようもなく色気があってドキドキしてしまうのだ。


「……そんな目でバカにしてないで、笑えばいいじゃないですか。こ、この年で、ファーストキス奪われて、ショック受けて動揺してる部下なんか」


騒ぐ心臓に気を取られていたら、いつの間にか涙は止まっていた。
ただ桜庭課長の視線に晒されていることばかりが気になって、さらに鼓動を速めながらひたすら顔を背け続けた。


「……わかった。じゃあ、責任取る」


どれくらいの沈黙の後か、桜庭課長はどこか晴れ晴れしたような声を上げて、意味不明なことを口走った。


「は?」


聞き返せた私の方が、いくらか理性的なんじゃないか、とも思った。


「一体何をどうやって!? タイムマシンでも使って時間を遡るとでも言うんですか」


いくら仕事では有能なエリート課長とは言え、そんな離れ業出来るわけがない。
だから、出来るもんならやってみろ!くらいの感覚で、思いっきり嫌味を込めてそう言い捨てたのに。
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