浮気者上司!?に溺愛されてます
「こ、怖くない」


俯いて、強がる言葉でそう誤魔化すと、恭介は軽く口角を上げて私を覗き込んだ。


「……初めてのくせに。余裕あるね~?」

「だ、大丈夫だから。……は、早くっ」


こんなやり取りをしている間にも、高まる緊張が臨界点を突き破る。
本当に逃げ出したくなる前に、逃げ道を断って欲しかった。
そうじゃないと、このまま堕ちるとこまで堕ちていけない。
途中でもがいて掴まれる物を探してしまう。


恭介はそんな私に一瞬眉を寄せて、次の瞬間、私を軽々と抱き上げた。
あっという間にベッドに組み敷かれた私は、恭介のはだけたバスローブの胸元から慌てて目を背けた。


「……あのなあ、奏美」


恭介がちょっと呆れた声で私を呼んだ。
そのままの体勢で、私の髪を纏めたシュシュをスッと抜き取ると、優しく髪を撫でてくれる。


「初めてなのに、そんな急ぐように終わらせていいのか?」

「う……」

「やっぱり怖いんだろ。だから、早く終わらせたい?」


優しく宥めるように言われて、鼻の奥の方がツンとした。


「だ、だってっ……」


そのつもりで連れ込んだのは恭介の方なのに、なんでこんなとこで私を宥めるの。
覚悟はしてても、怖いものは怖い。
だから早くこの胸のドキドキを抑えて欲しいのにっ……!
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