浮気者上司!?に溺愛されてます
「それはドラえもんにでも頼んでくれ」

「桜庭課長も意外とロマンチックなんですね。頭の中は二次元ですか」

「バカ言え、もっと現実主義だ、俺は」


嫌味を続けながら、ようやく顔を上げた私の前で、課長はパンツのポケットに片手を突っ込んでクッと笑いながら肩を揺らした。
そんな仕草がやけに妖艶だけど、似合ってしまうのが恐ろしい。


「現実的な方法で、お前のファーストキス奪った責任、とってやる」


週末の夜とはいえ、どう考えてもオフィス街にはふさわしくない妖しいセリフが、これまた似合ってしまうのだからイケメンというのは怖い。
は?と短く聞き返すしか出来ない私に、桜庭課長は……。


「俺がなってやるよ。……お前の初カレ」


そう言って、左手でスッと私の頬を撫で下ろした。


「……っ!……」


たったそれだけなのに、ゾクッとした刺激が背筋を貫くのを感じて、私はビクッと身体を強張らせた。


「それで、黙っててやる。水野の痛すぎる失言」


目と口元を細めてニヤッと笑いながら、課長は固まっている私を覗き込んだ。
そして……。


「……!!」


あっさりと、まるで息をするように、私の唇を再び奪う。


さっきのただからかうだけの軽いキスとは違う、もっと濃厚でねっとりしたキス。
あまりの出来事に何も考える余裕がなく、抵抗も出来ない私を薄く開いた瞳で笑いながら、桜庭課長はまるで余韻を残すように私から唇を離した。
そして、その目で私を見つめたまま、一瞬軽く瞬いた。
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