浮気者上司!?に溺愛されてます
私の表情の変化を一通りしげしげと眺めた後、恭介は呆れたように溜め息をついた。


「意味不明なくらい拒んでたくせに、初めてみると割と杜撰だな、お前」

「そ、そう……だよね。ごめんなさい」


思わず首をすぼめて謝ると、恭介は私を見下ろしながらクスッと笑った。


「俺はいいって言ったろ。そんなことも気が回らなくなるくらい、奏美は俺で頭ん中いっぱいだったんだろうし」


決して間違ってはいないけど、なんとも意味深な言い回しで、私の方がドキッとする。
そっと恭介の横顔を窺いみると、狙ってワザと意地悪な言い方をしてるということはわかってしまう。
それがとても悔しい。
悔しいけれど。


「で? 俺の貞操を守る為に、奏美は何をしてくれるの?」


ニヤッと笑って上半身を屈ませて、恭介はワザとらしく私の耳元でコソッと囁いた。
そんなことにも一々ドキドキする、恋愛初心者のダメな私。


「……とにかく、しばらく家に帰っちゃダメ」


そう、当たり前だけど、危険すぎて帰せない。
恭介は、私の返事を聞いて、ふ~ん、と腕組みをした。


「俺はどこに寝泊まりしろと? 言っとくけど、ホテルに連泊するほど金は余ってないし、ネカフェに入り浸るほど落ちぶれてもいないぞ」


そう、きっとそう言うと思ってた。
だから私は、恭介の言葉で、今の今まで揺れていた気持ちに覚悟を決める。
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