浮気者上司!?に溺愛されてます
「……うちに」


ボソッと呟いた声は思った以上に小さくて、恭介はえ?と聞き返してきた。
もう一度言わなきゃいけないと思うと、心は半分ヤケになる。


「しばらくうちに来て。そうすれば、四六時中恭介を見張ってられるし」


照れ隠しに思いっきり早口で捲し立てると、恭介は目を丸くして、ヒュ~と意地悪に口笛を吹いた。


「……奏美、意外と大胆なこと考えるな」

「ちゃ、茶化さないで! だって仕方ないじゃない! 変な風に考えないでっ」


思わず真っ赤になって唇を尖らせる。
ふと上げた瞳に信号が変わったのを見つけて、私は頬を膨らませて一歩先に踏み出した。


「……今度紫乃に会ったら、礼を言っておこう」


どこまで本気か、背後からそんな呑気な言葉が返ってくる。
そして、途端に大きな溜め息をつきたい気分になる。


そんなことされたら、なんの為にこんなこと決心したか、元も子もないじゃないか。


「会わせないようにしてるんだけど!?」

「でも、決着つける為には会わなきゃいけないだろ」

「う。でも、しばらくはダメ」

「せっかく奏美からの誘いで同棲するのに、モヤモヤしたままっつーのもなー」


シレッとそんなことを言う恭介に、頭の中が小噴火を起こした。


「ど、同棲って! 何、呑気なこと言ってるのよ!」
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