浮気者上司!?に溺愛されてます
自分で口に出すだけでも恥ずかしいのに、そんな息をするように軽く言わないで欲しい。


「違わないだろ。お互い愛し合った者同士、一つ屋根の下。起きるのも寝るのも食べるのも風呂も一緒」

「そんなことまで一緒にしませんっ」


一度立ち止まって、真っ赤な顔でふくれっ面を作ってから、私はキッと恭介を睨んだ。
さすがに恭介も溜め息をついて、軽く両手を上げて私に降参のポーズをしてみせる。


よろしい、と呟いて、再びクルッと進行方向に向き直ると、恭介じゃないけど私までモヤモヤする気持ちを抱えた。


ほんと、恭介のこと、そういう意味でいい加減な男だと思いたくないのに。
紫乃さんとの決着をあまりに軽く考えている恭介には苛立つ。
紫乃さんの真意がイマイチわからないままでも、簡単につけられる決着じゃないはずなのに。
離婚……って、もっと真剣で重大事件のはずなのに。


どうして恭介はこんなに緩い考え方しかしないんだろう。
私のことを大袈裟だって呆れるけど、私からしたら恭介は小さく考え過ぎだ。
なんだか、私と恭介の気持ちは、微妙にズレて噛み合っていない気がする。


「……なあ、奏美」


横断歩道を渡り切って、地下鉄に向かう階段に足を踏み出した時、わずかに遠慮がちに恭介の声が私を呼んだ
< 166 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop