浮気者上司!?に溺愛されてます
ん?と振り返ると、恭介は軽く私から目を逸らして、ポリッと指先でこめかみをを掻いた。


「風呂一緒……は、まあ流すにしてもさ。奏美の部屋、ベッド一台だし。俺だってそう何日も床でうずくまって寝るのは勘弁だ。ってことは、寝るのは一緒だよな?」

「……は?」

「いや……同じベッドで寝るからには、誘われてるんだろうし。触っていいのかな、と思って」

「なっ……!」


わずかに低めた声で聞かれて、ボッと音を立てて顔が熱くなるような気がした。
思わずガックリとこうべを垂れる。


どうして!? どうして恭介はこの状況でそんなこと考えられるの!?
どこまで緩い男なのよーっ!


「ダメに決まってるでしょ!? そもそもそんな理由でうちに来てなんて言ってない!」


半分呆れ、半分怒りを込めてピシッと言い渡すと、はあっ!?と恭介が抗議めいた声を上げた。


「なんっっだ、それ! そんな禁欲的な同棲、妙齢の男にとっちゃ拷問でしかないだろうが!!」


ものすごい勢いで不平を募らせる恭介に、本気で眩暈がして、身体から力が抜けていくような気がした。


「だ、だからいい加減にして! 同棲じゃないって言ってるでしょっ。それとも何? 恭介は裸で外に転がされたいの!? 近隣住民に発見されて通報されて、仕事クビになりたいの!?」


言い返す私まで、鼻息荒くなりそうだ。
そしてさすがに、恭介もグッと言葉をのんだ。


「……ああー、はいはい。さすがにそれは想像するだけでも惨めだよな……」


肩を竦めて大きな溜め息をつく恭介に、私の方が溜め息をつきたい気分だった。
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