浮気者上司!?に溺愛されてます
「週末だし。毎晩奏美の隣で必死に堪えた俺に、ご褒美とか。……ダメ?」

「そ、そんなことっ……」


甘えるように聞くの、反則!!
レストランで人目を気にするどころの騒ぎじゃない。
週末の夜、帰宅するには少し早めの時間帯とは言え、オフィス街の人通りは少なくない。
なのに、こんな道端で抱き寄せられて、なんとも際どいセリフを囁かれたら……。


理性と本能が崖っぷちでせめぎ合う。
恭介は私の返事を待つのに焦れたように、小さな音を立てて、私のこめかみにキスをした。


「っ……」

「奏美、焦らし過ぎ」

「……バカ、こんなとこ誰かに見られたらっ……!」

「ああ。……引っかかるといいんだけどな」

「もうっ……恭介の、バカ」


心が蕩けるって、こういう感じなんだろうか。
恭介の思うがままの気がして悔しいのに、こんなの本気で拒める女がこの世に存在するとは思えない。


「……みんなが見てる。早く帰ろ?」


恭介の胸に手を置いて身体を離しながらそう言うと、え?と恭介が目を丸くした。


「いいの?」

「それはっ……その……」

「……カモがネギ背負ってきた」


何をわけのわからないこと言ってるんだろう。
恭介から離れて、周りの視線をフィルターなしで感じてみると、もう刺さるように痛い。


「恭介っ、帰ろう」


思いっきり真っ赤な顔を伏せて人目を避けながら、私は地下に降りる階段に恭介を引っ張り込むのだった。
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