浮気者上司!?に溺愛されてます
週明け、午後の定例会議が終わると、課員は我先にと会議室から出て行った。
その先頭切って飛び出して、さっさと仕事に戻ろうとするのは羽村さんだ。
きっと、来週の会議に向けて、今日恭介から指摘された部分の見直しを急ぎたいのだろう。


ここ最近、恭介はほんのちょっといつもの緩さが緩んだ。
いや、緩いんだけどピシッと締まっている感じがあって、会議や打ち合わせでは辛口の突っ込みを繰り出したりする。


誰もが普通に聞き流して、発表者本人ですら盲点でしかなかった『落とし穴』を、相変わらず緩い雰囲気でズバッと突いてくるものだから、総合職社員にとって会議はある意味戦々恐々だ。


宇宙開発部だけでなく、他の部署でもそんな恭介の変化は噂されている。
それはひとえに外されたままの結婚指輪を邪推して、離婚して独身に戻るから、とか、実は既に部長あたりからいいとこのお嬢さんを紹介されているとか、根も葉もないことをまことしやかに囁かれているのだけれど。


私は一番最後に会議室のドアに手を掛けながら、残って高津にアドバイスをしている恭介をチラッと振り返った。


高津が抱える入札の件で、結局恭介が専門家を紹介することになったのだけど、きっとその詳細を説明しているんだろう。
高津がすごい真剣な顔でメモしている。


高津がテーブルに身を屈める横で、恭介は軽くテーブルに腰かけている。
時々高津のメモを指さして付け加えたりする締まった表情につい見惚れてしまった。
そんな私の視線に気づいたのか、恭介がフッと目を上げて私をとらえた。
慌てて目を逸らそうとすると、フッと口元を歪めて微笑まれて、射抜かれた気分で立ち尽くしてしまう。
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