浮気者上司!?に溺愛されてます
その結果の結婚か、と思うと、なんだか寂しい気分になった。
恭介は言葉通り、紫乃さんに誠意を向けたかもしれないけど、そこに愛はなかった。
としたら、私の言葉は彼女をどれだけ傷つけたことだろう。


恋も知らない私が、他人の結婚事情なんかわかるわけがない。
結婚は愛し合ってするもの……っていう普通の常識が、もしかしたら当たり前じゃないこともあるのかもしれない。


だけど、恭介がそんな……?
私は紫乃さんほど恭介をまだよく知らないけれど、信じたくない。


『恭介は、愛してない人と結婚考えるような人じゃないです』


紫乃さんに向けた言葉に、私は絶対の自信を持っていた。
だけどそれは、恋を知らない私の幻想だったんだろうか。


傾けたボトルを水平に戻して蓋をしめると、恭介はちょっと乱暴に冷蔵庫を開けた。
中にしまい込んで、バタンと音を立てて閉める。
そして、壁に背を預けてわずかに天井を仰ぎ見る恭介に、私はそっと目を上げた。


好きだから、もっと知りたい。
信じたいから、愛したい。


恭介が結婚を決意した時、必要なものはなんだったの?
愛してないのに結婚出来る?
それとも、他の形の愛がある?


そんなの、私には想像すら出来ないけれど……。


「紫乃さんを……優しく甘やかした?」


恭介の瞳を見つめる目が、少しだけ震えた。


「……私にするみたいに」
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