浮気者上司!?に溺愛されてます
微妙な嫌味を感じて、私は頬を膨らませながら恭介から目を逸らした。


「……最初の手料理は偽装だったか、って文句言いたい?」

「別に。俺、あの時から奏美の夕食事情は見抜いてたろ?」


悔しいけど、その通りだ。
こうして奇しくも一緒に暮らすことになってしまった結果、普段会社から帰って来た後の夕食にパスタの頻度が高いことはもう最初の一週間でバレてしまった。


悔し紛れに再び恭介に背を向けると、フワッと温かい温もりに覆われた。
ドキッとする間もなく、恭介の腕にキュッと力がこもるのを感じた。


「……紫乃には、こんなことしたことないよ」


耳元で低い声でそう囁くと、思わず振り返った私にフフッと笑ってから、恭介は呆気なく私を解放した。


「九分じゃ、さすがにシャワーも終わらないしな。とりあえず、俺着替えるわ」


そう言って奥の部屋に入ってドアを閉める恭介を、私はなんとなく視線で追いかけた。


本当は、恭介の言葉にとてもホッとしていた。
恭介と紫乃さんの間にあったいろんなことを想像すると、やっぱりとても切なかったから。


だけど今、ホッとしてるのに、紫乃さんの心を考えてキリキリ痛むのを感じている。
抱きしめてもらうこともないままの結婚生活なんて……。
いくら好きでも、いくら恭介が優しくても、そんなのどんなに苦しいだろう。切ないだろう。


「……そりゃあ、紫乃さんがあんなに恭介を罵るのも、納得出来るってもんか……」


私の心はゆらゆら揺れてどっちつかずで、自分でも解読不明なほど難しい、と思った。
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